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■Short Story 『彼方の4年目のバレンタインデイ』


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|今年は去年までとは違って、
|渡そうと思えばもしかしたら
|受け取ってはくれるかもしれない。

|だけどそれは去年までのチョコとは違うチョコ。
|そう、今年からはたとえ受け取ってもらっても、
|それは違うチョコなのだ。
|そんなチョコに意味はないし必要がない。

|なんだろう。
|バレンタインってこんなにも、
|色のない時期だったっけ。
|楽しそうにしている女の子達が別の世界の人のよう。
|ふと、思った。
|もしかしたら、
|私は去年まではあちら側にいただけの人だったのだろうか。
|私はバレンタインから遠ざかろうとしているのだろうか。
|あるいは逃げたいと思っているのか。

|静かに目を閉じる。
|違う…と思う。
|逃げてはいない。
|必要なチョコはもう買ったのだ。
|だからバレンタインから逃げているわけでもない。
|ただ、これ以上はもう必要ないだけ。
|もう去年まで買っていたチョコは必要ないだけなんだ。

|──そう思っていたのに、
|バレンタイン前日、売り場に足を運んでいた自分がいた。

|原因は夏奈だ。
|夏奈があんなことを言うから。

|夏奈は必要だといった。

|夏奈は、いつもそうだ。
|夏奈と友達になってからは、
|話をすると
|夏奈はいつもやらないことよりも、
|やることを選ぶ。
|前向きなことを話そうとする。

|なんの根拠もないのに。
|なんの保証もないのに。
|なんの自信もないのに。

|今度のことは自分の兄のことなのに。
|……違うか、兄のことを信じているってことかな。
|まったく、いい妹だ。

|でも、それは私の心を軽くした。

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