■「こころのアリカ」のSS
【←5】
6.
「夏目く〜ん。お母さんが今日は遅くなるって・・・」
そこまで言って気がついた。
和也の姿が見えない。
「夏目君?」
「スゥースゥー。」
ベッドに近づいてみると和也は静かに寝息をたてていた。
(寝ちゃってる…)
ありかはさっきまで座っていたイスに座る。
(かわいい寝顔だな。)
数分、寝顔を見ながら考え込む。
「・・・」
急にそわそわと体を揺する。
(さ・・・触りたい・・・)
そのまま、手を伸ばそうとする。
(い・・・いや、夏目君は今、病人なんだし・・・)
そう考えながら自制する。
が・・・
(ちょ・・・ちょっとだけ。)
誰もいないが、誰にも気付かれないようにそーっと手を伸ばす。
ぎゅっ、と和也の髪の毛のひとふさ・・・上にぴんと張っている触角を掴む。
(うわ〜・・・)
さらに力を入れてぎゅっぎゅっと握る。
(うわ〜・・・うわ〜・・・)
少し力を抜いて、ぐりぐりねじったり引っ張ってみたりする。
(・・・やっぱ地毛なのかな・・・)
「ぅ・・・」
「!?」
和也がうめくのに過剰に反応して、一気に下がろうとする。
「あ・・・」
椅子が後ろに倒れて、ありかは後頭部を机に打ち付ける。
「いったぁ・・・」
そのまま数秒、さっきまでの行為を反省、少しだけ自己嫌悪。
椅子を起こしてから座りなおし、今度は何もしないで和也が起きるのを待つことにする。
「ふぁ・・・」
ふと、自然にあくびが出た。
(そういえば・・・昨日あんまり寝てなかったな・・・)
そして、ありかはイスに座ったまま、うとうとと静かに、ゆっくりと深い眠りについた。
【→7】
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