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■「こころのアリカ」のSS


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8.

しかし、
「やまないね・・・」
「そうだね・・・」
ありかが目を覚ましてから30分。
雨はやむどころか激しさを増すばかりで、ゴロゴロと雷の音もでてきて家から一歩も出ることはできそうになかった。
そしてひときわ大きな音がしたと思ったら、和也の部屋の光が消えた。
「て、停電!?」
ありかは慌ててどたばたとそこらじゅうを駆け回る。
「た・・・橘さん落ち着いて!」
「わぁ−!わぁー!!」
もちろんいきなり暗くなったからといって普通はここまで錯乱しない。
ただ、ありかの頭の中には暗い部屋に和也と二人きりということしかない。
「橘さん!橘さんっ!!」
和也が叫んでみるが、ありかは全く落ち着く様子はない。
ふぅと、ため息をつき、部屋を明るくする方法を思いつく。
和也は手のひらを上に向け、少しだけ集中して、
「あ・・・」
チカラを使った。
「落ち着いた?」
「う・・・うん。」
電灯ほどとはいえないが蝋燭に火を灯したような、優しい光が部屋を包み込む。
「・・・いつみても綺麗だね。この光。」
「そうかな。」
「うん。私にはできないことだし。」
「でも、オレにもあんなことはできないし・・・」
そう言って、あるとても暑い日の出来事を思い出す。
「あれはオレにもできないことだったし、綺麗だったと思う」
「そっか・・・じゃあ、お互い様だね。」
そう言ってありかは微笑む。
その顔は、不安定な照明のせいかいつもの笑みと違う気がして、
和也はその顔がとても印象的だった。

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